ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態という意味があります。この考え方を住まいづくりに取り入れ、住む人が心身ともに健やかに過ごせる空間を目指した住宅が「ウェルビーイング住宅」です。

こうした住まいを実現するには、設計の段階で抑えておくべきポイントがあり、その要素を取り入れて、快適な環境を実現します。

本記事では、まずウェルビーイング住宅の基本的な特徴を紹介し、それを実現するために必要な設計や工夫について具体的に説明していきます。記事の後半では、ウェルビーイング住宅にするメリットとデメリットについても解説しているので、これから快適な住宅を建てようと考えている方は最後までご覧ください。

 

1.ウェルビーイング住宅とは？

ウェルビーイングとは、身体的にも精神的にも充実し、心地よく暮らせる状態を意味します。

この考え方を反映した住まいを「ウェルビーイング住宅」と呼びます。たとえば、断熱性能を高めたり、家族とのコミュニケーションが取りやすいような間取りにしたりなどにより、居住者が心身ともにリラックスできる環境をつくります。

近年では、コロナ禍の影響を受け、在宅ワークなどの増加や健康志向の向上によりウェルビーイング住宅が注目されつつあります。

 

2.ウェルビーイング住宅を構成する7つのポイント

住まいにウェルビーイングの視点を取り入れるには、抑えておくべきポイントを理解した上で設計しなければなりません。ウェルビーイング住宅にするための要素には主に以下の7つがあります。

1. 快適な温熱環境の維持
2. コミュニケーションが取りやすい環境
3. プライベート空間の確保
4. 高齢者や障がいを持つ方にも配慮した設計
5. 自然を取り入れた環境
6. セルフケア空間の確保
7. 可変性のある設計

快適な温熱環境の維持

ウェルビーイングな住まいを目指すうえで、室内の温度を快適に保つことは欠かせません。

そのためには、住宅の断熱性や気密性をしっかりと確保し、外気の影響を最小限に抑える設計が求められます。

快適な住環境を実現するには、家づくりの初期段階から住宅会社とよく話し合い、性能面にも十分配慮したプランを立てることが大切です。

コミュニケーションが取りやすい環境

ウェルビーイングとは、心と体が健やかであることに加え、人との良好な関係性も含まれます。そのため、家族との会話やふれあいが生まれやすい住環境はとても大切です。

住まいを設計する際には、自然に交流が生まれる間取りにすることがポイントです。たとえば、対面型のキッチンを設けたり、視線が通りやすいオープンリビングを採用したりすることで、日常的に家族が顔を合わせやすくなります。

こうした工夫が、家庭内のコミュニケーションを育む手助けになります。

プライベート空間の確保

精神的にも安心して暮らせるウェルビーイング住宅を実現するためには、プライベート空間の確保も重要です。趣味活動や仕事に集中できる空間を確保できれば、家族と暮らす住宅の中でも自分だけの時間を確保できて、充実した生活になります。

小さい部屋を作り書斎にしたり、趣味のための空間にしたりするとプライベート空間を確保できます。

高齢者や障がいを持つ方にも配慮した設計

ウェルビーイングな住環境を実現するには、年齢や身体の状態に関わらず、すべての人が快適に生活できる設計が求められます。例えば、床に段差を設けず、通路をゆったりと確保して手すりを設置するなど、身体的負担を軽減する工夫が必要です。

こうしたバリアフリーの視点を取り入れることで、将来的なライフステージの変化にも柔軟に対応でき、家族みんなが安心して暮らせる住まいになります。

自然を取り入れた環境

緑を取り入れた住宅にすると、心が落ち着き、精神的に癒される空間になります。中庭を採用し木や花を植えたり、窓やベランダから自然を感じられるようにしたりして緑や風を感じられるような設計にすると良いでしょう。

緑や風を通して四季を感じられると幸福感の高い住宅になります。

セルフケア空間の確保

心と体を整えるためのスペースを用意することは、ウェルビーイングな住まいを実現するうえで欠かせない要素です。たとえば、ヨガやストレッチができるスペースを設けたり、軽い運動を行えるような部屋をつくることで、日常的にセルフケアがしやすくなります。

ちょっとした時間に体を動かせる環境があると、運動不足の解消だけでなく、ストレスの軽減にも役立ちます。

可変性のある設計

ライフスタイルの変化に応じて空間を自由に使い分けられる柔軟な設計は、ウェルビーイングな住まいを実現するうえで大切な要素です。たとえば、ロフトスペースを取り入れたり、移動できる間仕切りを使ってレイアウトを変えやすくするなど、暮らしに合わせて調整できる工夫が求められます。

将来の家族構成や生活スタイルを見据えた設計にすることで、長く快適に暮らせる安心の住まいになります。

 

3.ウェルビーイング住宅のメリット

ウェルビーイング住宅にするメリットには、主に以下の4つがあります。

暮らしやすさを追求した快適な住空間

ウェルビーイングを取り入れることで、住宅全体の性能が向上し、心地よい暮らしが実現します。たとえば、高い断熱性や気密性を確保することで、季節を問わず室温が安定し、快適な室内環境を保つことができます。

さらに、自然を身近に感じられる設計や植栽を取り入れることで、気持ちが落ち着き、よりリラックスした時間を過ごせるようになるでしょう。

心身の健康をサポートする生活環境

ウェルビーイング住宅では、セルフケアがしやすいスペースを設けたり、バリアフリー設計を取り入れたりすることで、健康的に暮らせる環境になります。

毎日の運動が気軽にできたり、段差の少ない設計により転倒リスクを減らすことができるため、安心して長く生活できる住まいとなります。

こうした住宅は、高齢になっても快適で安全に生活できるのも魅力の一つです。

家族とのつながりが深まる空間設計

ウェルビーイング住宅では、家族同士の会話や交流が自然と生まれるような設計が重要なポイントです。家族構成の変化や生活スタイルの変化に柔軟に対応できる間取りにすることで、いつでもコミュニケーションが取りやすい環境が整います。

こうした住まいは、家族間の精神的な安定を促し、より豊かな暮らしを支える役割を果たします。

将来的な評価にもつながる資産性の高さ

ウェルビーイング住宅は、高い性能や柔軟に間取りを変更できる設計を取り入れることで、資産価値が上がる可能性があります。さまざまな工夫を凝らした住宅は、多様な住まい手にとって快適で魅力的な環境となるため、市場でのニーズも高まります。

住宅の設計段階から資産価値を見据えた計画を立てることが重要です。

 

4.ウェルビーイング住宅の課題

ウェルビーイング住宅設計時には、主に以下の課題が出てきます。

建築時の初期コストが高くなりやすい

ウェルビーイング住宅にすると、多くの要素を取り入れて設計する必要があるため、どうしても初期の建築コストが上がりやすくなります。特に高性能な断熱や気密性の確保、間取りの可変性を持たせる工夫には追加費用がかかるため、費用が膨らむケースが多いです。

そのため、予算の範囲内で優先すべきポイントを見極めて計画を立てることが重要です。

維持管理やメンテナンスに手間がかかることがある

ウェルビーイング住宅では、中庭や室内に木や花を取り入れることが多いため、定期的な手入れが必要になる場合があります。もしメンテナンスが負担になると、心の安定が損なわれることもあるため、あらかじめ管理の手間を把握しておくことが大切です。

設計段階で、手入れのしやすさを考慮した工夫を取り入れると、快適で安心できる暮らしにつながります。

地域や立地条件によっては、理想の設計が難しい場合もある

ウェルビーイング住宅では、間取りの工夫や自然環境の取り入れが重要ですが、建築予定の場所によっては希望通りの設計が難しいことがあります。特に、土地の広さに制限がある場合は、セルフケアスペースやプライベートエリアの確保が難しくなる可能性があります。

そのため、ウェルビーイング住宅を計画する際には、土地選びも慎重に行うことが大切です。

 

5.まとめ

今回は、ウェルビーイング住宅の基本概要や必要な要素、メリット、デメリットについて詳しく解説しました。

こうした住まいを実現するには、快適な住環境にするために性能を高めるだけでなく、家族とのコミュニケーションが取りやすいように工夫したり、自然を積極的に取り入れたりしなければなりません。そのため、設計段階からこれらのポイントを意識してプランニングすることが重要です。

住宅会社と相談しながら、快適な住環境を実現するために設計の段階で慎重に考えるようにしましょう。